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2009-06-19

「和魂と洋才と残業する人々」と外資系日本企業と

| 14:57 | 「和魂と洋才と残業する人々」と外資系日本企業と - Visionary Annex を含むブックマーク はてなブックマーク - 「和魂と洋才と残業する人々」と外資系日本企業と - Visionary Annex 「和魂と洋才と残業する人々」と外資系日本企業と - Visionary Annex のブックマークコメント

今週読んで面白かったブログのエントリ。

和魂と洋才と残業したい人々

なぜ日本の会社では人々はよく残業するのか? しかもサービス残業なんて言葉まであったりする始末。日本でみんなが残業を引き受けることの理由を、ジェノア式、マグレブ式という雇用関係から紐解く。ジェノア式が欧米系、マグレブ式が日本系という分け方だ。

雇用関係がジェノア式に上下関係で成り立っている場合、即ち、人を使う側と使われる側が明確に分かれている場合、使われる側同士に助け合う理由がない。新入りがへまをしても、それは雇用主とそのドジな新入りとの問題であって、自分の給料には関係ない。日本人なら、とっとと新人を使えるようにしてしまわないと自分が大変になる、と考えがちだが、これは「新人のへまのツケは客に回せばよい-責任を取るのは雇い主だ」、という発想が出来ない人間の考え方である。

これに対して典型的な日本のような組織は、助け合い組織であるマグレブ式である、と。

終身雇用制がしかれているような組織では、新人を教育して使えるようにしておけば、後々で自分を助けてくれるかもしれないし、自分が管理職になったときに無理を聞いてくれるかもしれない。更に言うと、期待できるのはこの新人君からの助けだけではない。同僚が困っているときにさっと手助けが出来る人材。すなわち、使える人材。その評判は組織全体に伝わっていく。そして、誰だって使える人材には協力したいものだ。仲良くなっておけば、いざという時に助けてもらえるかもしれないのだから。こうして、このベテラン社員は、新人君に作った「貸し」を、全然違う人から取り立てることが可能になる。

これは実に効率のいいシステムだ。困ったときにはすぐに助けがほしい。でも、自分が今必要としている人が、実は昔自分が助けてあげた人でした、というような都合のいい話はなかなか無い。自分が「助けてあげられる人」と「助けてほしい人」とは、往々にして一致しないものだ。しかし、「個々人の評判」が飛び交っているような組織では、このミスマッチが問題にならない。「借りがある人を助ける」のではなく、「誰かに貸しを作った人を助ける」のだ。そのためには、「誰が誰に助けたのか」という情報、すなわち評判が、皆に共有されている必要がある。こうして、評判メカニズムは組織内の協力関係を強固なものにしていくのだ。

安定的な会社では、助け合いはさらなる助け合いを呼んで、チームワークはどんどん洗練されてゆく。

(中略)

そして同時に、従業員の仕事量はどんどん増えてゆく。その結果として残業も増える。サービス残業になるケースも多い。要はただ働きである。しかし、それでも働く理由が彼らにはある。周りの同僚(上司や、場合によっては社長すら含まれる)を助け、自分が使える人材であることを示すこと。そういう評判を作り上げること。それが長期的にはむしろ自分の得になるのだから。

しかし、そうは言っても、皆が皆そこまでポジティブに残業しているわけではない。「仲間に協力してバリバリ働くことが最適な会社」と、「同僚達に合わせてどこまでも働くことを強要する会社」との間には、実は理論上大した違いはないのだ。

マグレブ型の組織であると、同僚からの評判がつきまとうのは避け得ない。そこでは仲間に協力してバリバリ働くことが推奨され、それは一方で同僚達に合わせてどこまでも働くことを強要される組織でもあるわけだ。だから日本的会社の悪い面として、上司が帰るまで帰らない部下だったり、自分より部下が先に帰ると不機嫌になる上司なんかがいたりする。

マグレブ型組織では、使えない奴だと判断されれば、同僚達によって「ゆるやかにマイルドに村八分にされて」排除されていくのだから、人の評判を気にするということは実に合理的な行動なわけだ。

以上のような組織論を日本における外資系企業に当てはめてみた。

日本人による中間管理職の層はマグレブ型な思考回路を持ち、欧米人によるマネジメント陣はジェノア型思考回路。したがって、中間管理職の上司達は残業する人たちを「使えるやつ」と思いがちな傾向にあり、一方で残業時間を表とグラフでしか見ない欧米人マネジメント達は「残業する人たち」を何でこんなに残業してるんだ?仕事ができない奴か?と思ってしまう傾向にある(と思う)。

僕の上司は日本人なんだけど、彼などはものすごく他人を助けるので、社内の評判はとてもいい。だけれども、ものすごく残業は多い。そして、助けてあげる人の中にはジェノア型の思考回路を持つ外人たちも入っているので、彼らは将来助け返してくれるということもなく、自分達の仕事を投げつけておわりにしてるだけということが往々にしてある。ということで、彼はもっとも割を食っている一人だったりする。でも、そんな彼も日本の大企業出身でマグレブ型組織の真っ只中で成長しているので、その不利益を不利益とも思わず今日も仕事にまい進するわけだ。

チームに外人比率が高くなるほど、ジェノア型の組織性向は強くなるようで、外人だけのチームになるとオフィスの電話すら取ったりはしない。「他人の仕事の内容は知らないので、代わりに電話を取ったとしても何の訳にも立たないから」というわけだ。

助けてくれない外人たちはジェノア型思考回路なので、それはそれで至極当然だし、自分の職責に忠実ということになる。彼らにとっては、気のいい日本人たちは見返りも求めず仕事を手伝ってくれたりする(当然将来的に助けてほしい、というマグレブ型の合理的期待はあるんだけど、それには彼らは気がつかない)ので、日本はとても働きやすいというわけだ。こうしていいとこ取りをする外人たちは出世し、日本人は残業で疲弊していく。何だかそういう構造になってるような気がする。おまけに外資系企業なので雇用は安定的でないので、マグレブ型組織が機能するような長期的な雇用関係ではない。マグレブ型の行動は実は短期的に損を引き受けるだけで戦略として間違っている。

このようにマグレブ型な日本社会で、ジェノア型思考を要求される組織で働くというのは実は大変なことなのかもしれない。安定的な雇用形態が崩れ去った日本社会でもこれからはジェノア型雇用環境が増えていくのかもしれなくて、今は過渡期なんだろう。

ジェノア型とマグレブ型とが入り混じった、ある意味過渡期にあるような組織で働く場合にはどうしたらいいか?と考察してみた。

上司が外人である場合には、ジェノア型思考回路を取り込んで、自分の仕事だけにまい進する。そこできちんと結果を出せば、きちんとした評価をされるだろう。他人の仕事を手伝ったりしないので、日本人ウケは悪くなるかもしれないが、そこはどうせ評価されないのだから、手伝っても手伝わなくても同じなんだと割り切ってしまう。

上司が日本人である場合だとすると、ある程度評判がよくないと「使えない奴」と思われてしまったり、「チームプレーができない奴」だと思われてしまう恐れがある。したがって、言葉は悪いが「上手く立ち回って」使える奴だという評判を獲得することだろうか。これが行き過ぎると、上司の顔色だけを伺うゴマすり気質な人だけが生き残るという可能性も生じるので、諸刃の剣なのかもしれない。

もう一歩進んで考えると、日本社会自体が大きなマグレブ型組織といえるのだから、社内での評判に捉われず自分の所属している業界、「使える奴」だという評判を勝ち得る方向に進んだ方がいいような気がする。所詮、長期的に安定した雇用が確保されない組織内での評判では将来を担保するに足りるものではない。しかし、業界内で一定の評判を勝ち得ていれば、現在所属している組織にとっても評価の対象となるし、将来仕事を変える時にも行く先は出てくるはずだ。ある意味、業界内での評判を高めるということは、忙しいふりをすることでもないし、上司よりも先に帰らないように気をつけることとも違うので、より困難な道になるだろう。でも、どこでも通用するポータブルスキルを身につける、業界の中でのネットワークを広げるということになるので、よっぽど自分にとって実りある方法なんじゃないかと思う。